5/06/2015

賛否両論の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を語りつくしたら…


4月のシネりん会合のテーマは「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」でした。

会合に参加された方々の中でまだ見ていないという方もいらしたので、ネタバレなしでの見所などを(見た人が)語ってくださり興味はどんどん膨らんでいきました。そしていろいろな見方ができる映画で語りがいのある作品であり「バードマン~」を見た方もまだ見ていない方もこの映画は今までにない作りになっていることをご理解できたと思います。

まずどこが作品の見所なのか、シネりん会合からのおさらいです。

★今までにない長さの長まわし撮影(ワンカットが長い。)でもこれは技術力でワンカットのように見せている。川崎さんがプレゼンツしたオーソン・ウェルズ監督の「黒い罠」"Touch of Evil"やヒッチコック監督の「ロープ」"Rope"など日本では三谷幸喜「大空港2013」など長回し映画やドラマはいろいろとあります。でも「バードマン」はとんでもなく長い。いつもの映画と違うカメラワークを堪能することができます。長いワンカット部分でも時系列がなんだかおかしいということも気が付いた人がいました。

アンチハリウッドやアンチブロードウェイ的な描き方とみることができる。業界のことが分っている人たちは笑いのポイントとなっています。

★昔は成功していた60歳の男としての心象風景。
自分の人生はWishful thinking(願望)だけでは成り立たない。現在の考え行動が自分の世界すべてである。

★娘と父の関係、夫婦関係など家族関係のあり方、他人との人間関係のあり方。
愛に飢えている男が再起をかけたブロードウェイ公演の戯曲がレイモンド・カーヴァー作の「愛について語るときに我々が語ること」この戯曲をなぜリーガンが選んだのか?村上春樹訳の本を読んでみるとヒントがあるかも…。

カメラワークやドラムの音、俳優のうまさ、どれもすばらしい!今回はこの作品を通してどんな気付きがあったか?というところにポイントを置きました。

この映画は「自分のしなければならないということは何一つない、自分がやりたいということだけがある」というメッセージを読み取ることができました。人にどう見られようがどうでもいいのです。自分の人生なのですから自分のやりたいことをやればいい!でもその人生のベースにあるのは愛だということが前提の上でです

みなさんはどのようにこの作品を見ましたでしょうか?(この写真の下はネタバレ文章有り。)


4月のシネりんの会合より お約束の集合写真

実は最後の最後で気が付いてあわてて撮ったので参加者全員ではありません。先にお帰りになった方々、すみません!

----ここからはネタバレですのでご了解のうえ、読み進めてください。--------------------------

映画の撮影の仕方が今までのカットでつなぐやり方をしていないというところが新たな挑戦の映画でした。カメラーワークがすごいんです。長まわしの映画は他にも沢山ありますが場面を移動してのずーと長まわしするのはあまり見られない作風です。なぜこんな撮り方をするのかは映画を見終わってからなんとなくわかるんです。

シネりんの見解では…
実は主役のマイケル・キートン演じるリーガンはすでに死んでおり主人公が死んだ時に自分の人生の最後の2日間を切り取った部分と彼のこうなりたかっとという妄想部分を彼自身が見ているということでなりたっている作品、もしくは銃で頭を撃つシーンで本当に死んで、最後の病院のシーンは死んだ後のリーガンの妄想部分。
長回しをしているカメラは同じ時間帯で物事が進行しているという意味を思わせますがおかしなことに時系列がずれており、同時進行になっていないんです。この撮り方から時間はじつは存在しないということがこの映画からわかります。
また最初のマイケルキートンが宙に浮いて瞑想しているところからはじまるのは、これは現実を描いていないよという監督のサインにも見えるんですね。そう、この映画は全部リーガンの頭(心)の中のことなんです。
ハリウッドで成功した経験を持つ主人公の将来の姿はおちぶれた俳優、成功時に自分勝手にふるまっていた彼が待っていたものは家族の崩壊でした。こんな人生をおくってしまったという主人公の一番やり直したい部分を描いている。それは特に娘との関係でした。彼は後悔しているんですね。

最後のシーンは主人公がやっと自分がなにをすべきだったかを理解し、輪廻転生の道を選び、また自分の人生をやり直すということを天に飛んでいくというイメージで終っているのだと思いますが、みなさんはどう捉えたでしょうか?